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局でひとり筆をとりて

普段は灰も被れないオタクよりの高校生が、硝子の靴ではなくキーボードと美しい文化を以て時には古典の世界を賞賛し、時には世間をぶった斬ります

清らかに徒然に ~清女と能筆家について~

 

私は女子高生の癖に何度も枕草子を読み返す変人ですが、いつもめくるページが藤原行成が登場なさるページです。

行成平安時代を代表する容貌の良い能筆家の一人で、清少納言とも交流のある方です。恋仲説と友人説がありますが、私はバリバリの前者シンパです。

 

「特に目立ったり評判になったりするほど風流ぶった振る舞いはせず、平凡な気性でおられる様子を他の女房達は非難しがちだけど、『私は並の方ではございません』と中宮様に申し上げ、中宮様もそれをご理解していらっしゃる。でも彼はそんな女房を見向きもしないで、『目は縦ににつき、眉は額の上に吊りあがり、鼻が横についた顔でも、口元が愛らしく、顎の下や首筋が綺麗で声の美しい人なら好きになれる』とおっしゃるからますます女房達は彼を低く評価し、悪口まで中宮様に直接告げたりする」

・・・と清少納言は書いています。

 

イケメンさんで頭も良いのに普段は静かで平凡なご様子で、しかも面食いとは・・・(笑)是非ともお会いしたいものです。

知的レベルが一致しているこの二人は、お互いを遠江の浜柳(何度刈っても生える川の柳の様に離れてもまた会う仲)であると言っています(因みにこれは万葉集からとっているそうです。こんな言葉がサラッと言えれば素敵ですよね)。

有名な逢坂の関のエピソードで男女のやりとりをなさる二人を想像しただけでも微笑ましく思ってしまいます。

中弁である行成は、中宮様に何か申し上げる際に必ず取り次ぎを清女に依頼し、局(私室)に下がっていても呼び出させ、里帰りしていれば手紙を書いたり直接お家に行かれたりしたそうです。

もうしばらく参上しないのなら私の代わりに言上する使いを出して下さい」などという台詞もあります。回りくどすぎるだろ!まあそれだけ会いたいと思われるのも女性としてはまんざらでもないかもしれませんが・・・。

私に顔をお見せなさい」と笑いかけられる場面もありますが、当時の女性が顔を男性に殆ど見せることのない時代の乙女は相当ドキリとしたでしょうね・・・容姿にコンプレックス(クセ毛だったらしいですよ!)のある清女なら尚更でしょう。

ああああその場面だけでいいから変わって欲しい!清少納言

私も「あますことなく顔を見てしまったよ」って言われてみたい!

ずるい!ずるいぞ清少納言

 

・・・失礼しました、エキサイトし過ぎました。

私もこんな素敵な方と親密なやりとりをしてみたいものです・・・。

 

<逢坂の関とは>

行成がサッサと話を切り上げて宮中に参上してしまった翌朝、

「夜通しお話したかったのですが、鶏の声に急き立てられてしまったのです」

とお手紙を書かれた。すると清女は

「夜深くに鳴いたその鶏の声は孟嘗君のそれですか?」

と返したそう。すると行成は

「(逃げる為に)鶏の鳴き真似をして函谷関を開いた話は史記にあるが、私が申したのは逢坂の関(あなたとお会いした夜の意)のことです」

と返され、そこから和歌のやりとりをした・・・というエピソード。

因みに和歌を訳すと

鶏の声色で函谷関の関守を騙すとしても、男女が逢い合う逢坂の関の関守(ここでは清女のこと)は決して騙されて許すことはありません

逢坂は人が越え易いので、鶏が鳴かなくてもすぐに戸を開けて人を待つとかいうそうですよ(あなたはすぐ人と会うと言われていますよ?という冗談)

・・・となるそうです。

 

平安文化万歳。

 

ついでに私の好きなエピソードをもう一つ。

 

<冷淡な下部>

ある日清女の元に行成から、絵の様な白い包みが美しい梅を添えられて届く。

開けると餅談(スミマセン、談の字は本当は別の字なんですが・・・変換で出ませんでした)が入っている(鶏の卵や野菜を入れて煮たお餅)。

文を見ると、「この下男は自分で持参したいのですが、昼は顔が醜くみっともないので参上しないようです」と書いてある。全く滑稽な下部である(私は好きですがね!)

清女はお返事に、「ご自分で持参しない下部はとても冷淡にみえますよ?」と紅梅の紙で送る(ここでポイントなのが、紅白で送っているところ、そして文の言葉が韻を踏んで遣り取りされているところ!あの時代の人達はセンスが相当鍛えられているでしょうね・・・)。

するとすぐさま行成がいらっしゃって「下部がー下部が参りましたよー」と声がするこれが好きなんです!この感じが!!!!!!!!!!!

「ああいった贈り物には適当に歌を詠んで返事されるのかな?と思っていたから吃驚しました。実に見事なお返事だった。ちょっと歌に自信がある女性はすぐ歌を詠みたがるが、私はそんなことしないあなたの方が付き合いやすい。私に和歌を詠みかける人はかえって思いやりがないことです」

「まるで則光(清女の離縁した夫。警察官の様な職種でアホ可愛いイメージがある←失礼」)みたいですね」

と笑い合った・・・という。

 

羨ましすぎる(言い切り)。