読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

局でひとり筆をとりて

普段は灰も被れないオタクよりの高校生が、硝子の靴ではなくキーボードと美しい文化を以て時には古典の世界を賞賛し、時には世間をぶった斬ります

清らかに徒然に ~大好きなお二方で執筆part2~

 

警告!!!

 

事前にお伝えしなければならないことがあります。

まず、この小説(?)は私がちょっと妄想を止めずに勢いに身を任せて書いている為、皆様のお目汚しとなる可能性があります。

よって、下のどちらかにあてはまる人以外は、私の別の記事で我慢願います・・・スイマセン。

①古典が好きな方

②夢小説などが平気・・・というか中二病気味の人

どちらかを満たす人はご覧下さい。

というかこれよりも清女と能書家編を見て下さい!

後、中のネタでわからないものは清女と能書家編で詳しく書いてあるので探してみて下さい。

 

 

「やっぱりいるのね・・・」

「え、駄目?」

「いや別に・・・」

図書室に来たら、行成がいた。いつものように。

古典の授業で新しい文章をやった日は必ず図書室に来るということが、彼には既にバレていた。

最近妙に行成は、私と一緒に放課後を過ごしたがる傾向にある。

提出物返却の日には教室で、古典の授業の日は図書室で、何もない日には駅前のバス停で、私を待っている。ぼんやりとした目で、文庫本を捲りながら。

そして今日も相変わらず、私の前にいる。

「・・・で、今日は」

「今日やったのが平安前期だったから・・・小野小町でも調べてみるかなと」

「小町か。言われてみればあまり知らないかもしれない」

その日にやった時代あたりの人物一人を深く掘り下げてみる。これが私の中学からの習慣だった。そして、それは『私達』になりつつある。

 

「小町って十二単を着ていなかったんだな」

「まあ時代的にもまだないからね。じゃあ小町伝説もちょっとやっておこう」

「えーと・・・有名なのは・・・通い小町・・・?」

「ああ、深草少将の百夜通いね。九十九夜通って行き倒れたとか」

小町は本当に美しい女性だったが誰一人として求婚者を受け入れず、公達は次々と熱を上げては散っていったとか・・・。

晩年は庶民と結婚したが、夫にも子供にも先立たれ、諸国をさすらう旅の末に朽ち果てたという。

「綺麗な花って何で散る確率が高い傾向にあるんだろう?」

「まあそういう話はよくあるよね・・・楊貴妃クレオパトラもそうだったっけ」

「・・・うん」

意味深な顔の行成に、なんだか私はからかってみたくなった。

「え、なに?やっぱり行成も綺麗な人が好きなの?」 

「え?・・・いや・・・」

「男の子だからなーうんうん。意外とムッツリさんなのね」

ニヤニヤする私の言葉に行成は顔を背けてしまった。なんだか可愛い。

「別に恥ずかしいことではないのよ?時々特殊な人もいるけど、基本人間は美男美女を好むんだから」

自分で言っておいてなんだけど、一応フォローしておく。ほんの少しだけ話題をずらしてみる事にした。

「じゃあ・・・行成はどんな子が好きなの?例えば、クラス内で可愛いと思う子とか」

そう言うと行成は背けた顔を戻して、

「・・・清花と仲の良い人達・・・かな」

「あ、泉と紫苑?」

私といつもつるんでいる女子二人。

泉は学年一の美少女と名高い私の幼馴染だ。

男子は勿論、性格が男前なので女子にも人気があり、スポーツ万能なクラスの中心的存在だ。

誰とでも隔てなく接することができる彼女は、実は行成に声をかけた子でもあった。

一方の紫苑は控えめで育ちの良さそうな上品な女の子。

清楚な雰囲気だが、周りの女子が目立つ為か地味な印象を受ける。

しっかりと自分の意見は持っている頭の良い子なのに、普段は目をつけられるのが怖いのか大人しくしているタイプで、私とは正反対の人間だった。

正直に言うと、紫苑と仲が良いというよりはコミュニケーション能力に長けた泉がバランスをとっている気がする。

どちらも可愛いというのに充分な外見偏差値である。

しかし、私は何か違和感を覚えた。

「あのさ、行成って泉に声かけられたことあるんでしょ?それなら何でもっと話したりしなかったの?」

すると行成は目を少し見開いてから、私をジト目で見つめて、

「・・・知ってるの」

「うん、まあ親友だし」

「・・・女子の筒抜けの情報網・・・」

そう言ったきり積み上げた本に突っ伏してしまった。思わず吹いてしまう。

「・・・笑うなよ」

「ごめんごめん。で、何で?」

私は笑いながらも追求を緩めなかった。自分が図々しい人間なのは自覚あり。

行成はしばらく言うか言うまいかと髪を搔き毟っていたが、その倒れた体勢のまま、

「・・・可愛いか話したいかは別の問題・・・」

「へ?」

「だから、個人的に面白くてもっと話したいと思うかは顔と関係ない」

「・・・じゃあ行成は、私みたいな奴の方が一緒にいて楽しいわけ?」

「・・・・・・」

私を見ないまま黙り込んでしまっている。

辺りからはページを捲る音や、ペンを走らせる音が響いている。

隣で顔を隠す男の子。

どんな顔をしているんだろう、何を考えているんだろう、

・・・私をどう思っているんだろう?

「・・・もしもーし、行成さーん」

「・・・」

「聞いてますかー?」 

頭をペンペン叩いたり、脇腹をつついたりしてみる。

全く反応がない。それどころか、余計に顔を私側から背けてしまった。

人間は意地悪なイキモノだ。嫌がられると煽られるはイコールだ。

・・・よし。

「おりゃっ」

「っ!?」

肩を掴んで思い切り揺さぶってみる。行成はビクリと強張って思わず起き上がった。

驚いた瞳が映る。今度は私が肩を強張らせた。

「・・・・・・」

「・・・えっと・・・」

まっすぐな視線が痛い。

「・・・・・・」

「その・・・ごめんなさい・・・」

「ふっ」

しょんぼりとした私の声を聞いて行成は思わず笑っていた。

なんだか申し訳なくて、今日の私は彼に笑い返せなかった。

 

「・・・じゃね」

「ん」

一通り小野小町を調べてから、私だけ何だかギクシャクしたまま別れた。

駅はまだ日長の太陽に照らされている。

いつも通りホームで口を開けてくれた電車に、私は携帯を取り出しながら乗り込んだ。

もう何度か送信したアドレスを電話帳を開いて探し、メール作成画面にする。

しばらくそのまま固まっていたが、やがて少しずつ指を動か・・・

「・・・せねえ・・・私ってこんなにコミュ障だったっけ?」

言葉が見つからない。

我ながら情けない。小論文や作文はいくらでも書けるのに。

すべなくて、タイトルだけに文字を入れた。

『なんか今日はごめんなさい』

送信すると丁度いつもの駅に着いたので降りた。

点字ブロックで思わずこけそうになる。何だか今日は厄日だ。

「おーい」

溜息をついていると、聞き覚えのある声がしたので振り返る。

抜群のスタイルに、派手な顔立ち。

長い長い黒髪が、日に当たってとても綺麗だった。

「泉、乗ってたならもっと早く話しかけてくれればよかったのに」

「だって清花、意味深な表情だったもん」

「どんな顔よ」

泉はやたらにやけながら、

「恋する乙女みたいな切ない顔」

「ふぁっ!?違うしっ!」

私は幼馴染を引っ叩いて敵前逃亡した。

今から思えば、何でこんなに必死だったのか分からなかった。