読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

局でひとり筆をとりて

普段は灰も被れないオタクよりの高校生が、硝子の靴ではなくキーボードと美しい文化を以て時には古典の世界を賞賛し、時には世間をぶった斬ります

清らかに徒然に ~大好きなお二方で執筆part3~

警告!!!

 

事前にお伝えしなければならないことがあります。

まず、この小説(?)は私がちょっと妄想を止めずに勢いに身を任せて書いている為、皆様のお目汚しとなる可能性があります。

よって、下のどちらかにあてはまる人以外は、私の別の記事で我慢願います・・・スイマセン。

①古典が好きな方

②夢小説などが平気・・・というか中二病気味の人

どちらかを満たす人はご覧下さい。

というかこれよりも清女と能書家編を見て下さい!

 

「ごめんってー清花」

「・・・むう」

清花は泉を引っ叩いてから敵前逃亡を試みたものの運動能力の格差社会に勝てず、必死に拝むポーズをとる泉に剥れていた。

「何よー謝ってるじゃないかーそんなに嫌だったの?」

「うーん・・・何か恥ずかしかった」

自分の色恋沙汰など考えたこともなかった。

敢えて想い人を挙げるなら在原業平とか訳の分からないことを口走りそうなので、友人とも話題にしたことがない。

「うーん・・・清花にもそんなことがあるのね、知らんかった。さっきの冗談だったのに」

「え、じゃあ何だと思ったの?」

「寮の食事のメニューを考えているのかと」

「あー・・・今日の夕飯は何かな。お魚だっけ?」

私達の学校は寮制だ。

男子と女子では少し寮が離れているが、学年関係なく過ごせる。

だからであろうか、この辺りの高校の中では生徒間の結びつきが強いことで有名だが、やたら人の噂や個人情報が飛び交うという特徴もある。

「メカジキだといいなー」

「西京焼きもいいよー・・・ねえ」

「ん?」

「これさ、思春期の女子の会話じゃなくてしゅ」

「言うな、私達は主婦ではない」

泉とふと目が合って、何だか顔がにやけた。

馬鹿馬鹿しいこと言い合って笑いあう当たり前の日常。

これっていつまで続けられるのかな。

夕焼けの様に温かくなった胸がチクリとした。

 

お魚を満喫した翌日、今朝は泉と紫苑と登校時間が被り、三人で学校に向かうことになった。

「昨日の鰈の煮付け美味しかったなー」

「私はもっと生姜効いてる方が好きだけどなー」

「私は甘い方が好きですけど・・・」

通勤途中の大人達と一緒に電車に乗り込む。

私はチラリと1人のOLさんに目をやった。

タイトスカートにうっすらと模様の入ったタイツ。

化粧も完璧で、細いヒールで高い足音を立てながらスマホをイジっている。

カッコいいと思うのに、なりたくないとも思ってしまうのは何故だろうか。

サッと視線を戻す、とふいに、自分の携帯が私に着信を伝えてくれた。

まさか、と携帯を見ると「行成」の名前。

友人らが話し込んでいるのを確認して、そっと電車の壁に背中を預ける。

こそこそとメールの受信箱を開・・・え、誰だ!今「こそこそじゃなくていそいそじゃね?」って一㎜でも思った奴は!

何だか妙にソワソワする。間違えて送信箱を開いてしまった。

やっと目的の画面に到達すると、慎重にボタンを押す。

『ごめんって何のことですか?俺は何も気にしていませんよ』

あれ?

何だかホッとすると共に拍子抜けした。

天然なのか、実は結構馬鹿なのか・・・。

「ねえ清花ってば!」

「ふわっ!?」

 「もおーさっきから聞いてんのに」

「ご、ごめん・・・」

泉に話しかけられていることに全く気づかなかった。そんなに行成のメールに熱中していたのか・・・お恥ずかしい。

「で、何だっけ?」

「今日ってさ、文化祭のクラス企画の打ち合わせじゃね?」

泉に言われて気がついた。

言われてみれば、今日は我らがクラス1Kの行う劇をどんなものにするかどうか会議をするんだった。

「・・・そーいやそうだったね、忘れてたわ」

「えー・・・清花さんは自分のクラスに興味無さ過ぎですよ・・・」

紫苑が控えめに非難してくる。見た目も声も可愛いが、言っている事は鋭く正しい。

確かに私は友人以外のクラスメートをよく知らないし、1Kに対する関心も皆無だ。

だがそれは、自分にそうする義務がないからだった。

どうして裏では陰口を叩いたりするような連中と仲良くしなければならないのか、その必要性を感じられなかったからだ。

「まあ清花はそういう奴だからなー・・・お、次の駅だよ」

 

「ではシェイクスピアの劇ってことでいいかな?」

泉が黒板に書きながら言う。皆の反応からして異議はなさそうだ。

おそらく、何となくカッコいいという理由で選んでいるのだろうが・・・私には関係ないしなあ・・・。

「じゃあ脚本は誰がやる?」

「あ」

クラス全体の空気が凝結した。

考えてなかったんかい。

はあ・・・と、清花は窓際の席から外を眺めた。大きな鳥が晴天の空を旋回しているのが目に留まった。

あんな風に、自由に何かをするってどれだけ幸せなんだろう。色んなものに縛られた私には、あの子の気持ちが分からない。

「ん?」

何となく自分に視線が当たっているように感じて、教室に視線を戻した。皆がどうするのかとあれこれ言い合っているのが見える。

と、その中で明らかに自分と目が合う人がいた。

「行成・・・?」

私は自分が他人の心が読めるとは思っていない。

だが、行成はきっとこう言っている。

『こういうの、好きだよね?』

・・・私に、やれと?

私が自分に人差し指を向けると、行成は首をゆっくりと振った、縦に。

何で行成がそんなことを言うのかしら?確かに事実だけれど・・・。

戸惑いを覚えながらも、私の心境はどことなく変化した。

望まれるのなら、・・・彼に望まれるのなら。

・・・何で望まれて人間はこんなに気を良くしちゃうかなあ・・・。

「・・・やるよ」

「えっ」

泉だけでなく周りもぱちくりとしていた。

私、そんなにおかしなことしたつもりは

「・・・二人でやるの?」

へ?

反射的に先程と同じ方向を見る。

最近よく見る無骨な腕が、確かに天井を向いていた。

「は・・・?」